新生ローグ中隊 #2 |
年 代 | 出 来 事 | 場 面 | 参 考 |
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ウェッジ・アンティリーズはアクバー提督に向かって敬礼すると、モン・カラマリが敬礼を返すまで姿勢を崩さなかった。 |
フォロア Folor |
小説 上 P.42-52 |
ウェッジ「お会いできて光栄です、閣下」 |
アクバー提督(Admiral Ackbar)「きみならいつでも歓迎だ、アンティリーズ中佐。いまソーム将軍とも話していたのだが、ローグ中隊の復活によって艦隊の士気はいちだんと高まることだろう。彼の話では、ほぼ態勢はととのったとか。隊員名簿には錚々たるパイロットが名をつらねておるな」 アクバーは顔を動かすことなく、もう一方の魚眼をべつの男に向けた。褐色の髪をした戦闘機パイロットはうなずいた。 ウェッジ「ええ。じつはその名簿のことでご相談があるのです。わたくしに一言の相談もなく、名簿の入れ替えがおこなわれています」 ウェッジはソームの顔を見据えた。ソームは部屋の片隅に浮かぶ水色の球体から視線をそらすと、両手をうしろ手に組んだ。 |
ホートン・ソーム将軍(General Horton Salm)「それは状況判断にもとづくものだ。きみにいちいち相談する必要はない、アンティリーズ中佐」 ウェッジ「承知しております、将軍。ホビー・クリヴィアン中尉とウェス・ジェンスン中尉は次期訓練チームの有力メンバーになることでしょう」 ウェッジ“二人とも手放したくなかったが、それはとっくの昔にケリのついた話だ” ウェッジ「隊員の半数が政治的な理由にもとづいて選抜されることは承知のうえです・・・」 アクバー「しかし同意しかねるわけか?」 アクバーは身を乗り出した。ウェッジは唇を噛みしめると辛辣な口調で切りだした。 ウェッジ「提督、皇帝の死から二年半たちますが、わたしはその大半を同盟軍への支持を訴える惑星行脚に費やしてきました。われわれが帝国の言うような無法集団ではなく、れっきとした同盟組織であることを新加盟国に印象づけるために、スピーチをおこなったり、赤ん坊にキスしたり、想像を絶する数の政治指導者たちとホログラムにおさまったりしました。わたしはデス・スターを撃破したローグ中隊の英雄として、客寄せのマスコットよろしく宣伝役に徹したのです」 フォロア反乱軍スターファイター訓練センターの所長でもある将軍は、冷ややかな笑みを浮かべた。 ソーム「ならば同盟国が名高い飛行中隊に同胞を送り込もうとする、心情はよくわかるはずだ」 ウェッジ「その点は理解しているつもりです。しかしローグ中隊の看板を掲げたところで、真の精鋭部隊でなければ、帝国を屈伏させることはできません」 ソーム「当然だ」 ウェッジ「しかし、将軍、外交部門の担当者は考え方が違うようですね。ボサンは第二デス・スターの位置を突き止めた恩賞としてローグ中隊の一員になることを要求しております。タイフェラ人パイロットが二名もいるのは、バクタ生産を独占している二大コングロマリットの機嫌を取るためですし・・・」 アクバーは水かきのある手をあげた。 アクバー「中佐、要点を言いたまえ。選抜された隊員では見劣りするのかね?」 ウェッジ「いいえ、ですが・・・」 アクバー「どうした?」 ウェッジは深々と息を吸い込んでから、ゆっくりと吐き出した。 ウェッジ“ルークにいつも注意されたものだ。腹を立てたところで何の足しにもならない。彼の言うとおり、怒っても問題解決の糸口は見つからないのだ” ウェッジ「提督、わたしは戦闘機中隊の指揮官です。志願してきた新人パイロットのなかから腕利きを選びだし、最強のチームを編成したつもりです。パイロットはいずれ劣らぬエリートぞろいですが、問題は生存率がいささか低いことです。しかしもう少し訓練を積めば、帝国軍を震えあがらせる存在に成長することでしょう」 ウェッジはソーム将軍にうなずくと、つづけて言った。 ウェッジ「ローグ5と副官(XO)の二名をのぞけば、隊員の選抜に異論はありません」 ソーム「ディーガン中尉は優秀なパイロットだ」 ウェッジ「それは認めますが、将軍、彼はわたしやコラン・ホーンと同じく、コレリア出身です。コレリア人が突出することは政治的に賢明とはいえません」 アクバー「代替要員に心当たりがあるのかね?」 アクバーの一方の魚眼がわずかに動いた。ウェッジはうなずいた。 ウェッジ「ギャヴィン・ダークライターを使いたいと思います」 ソームは断じて認められないとばかりに首をふった。 ソーム「あいつはタトゥイーンから出てきたばかりのファーム・ボーイだ。スピーダーからウォンプ・ラットを仕留める能力があれば英雄になれると思い込んでいる」 ウェッジ「お言葉ですが、将軍、ルーク・スカイウォーカーもタトゥイーン出身のファーム・ボーイでしたが、スピーダーからウォンプ・ラットを仕留める能力をみごとに掛かして英雄になりました」 将軍はウェッジの反論に声を荒げた。 ソーム「きみはダークライターにもスカイウォーカー中佐のようなフォースが備わっていると言うのか」 ウェッジ「それはわかりませんが、ルークに引けを取らない心意気の持ち主であることは確かです」 ウェッジはモン・カラマリに向き直った。 ウェッジ「ギャヴィンは、ルークやわたしと一緒にヤヴィンで戦ったビッグスの従弟にあたります。わたしは戦線離脱を余儀なくされましたが、ビッグスは最後までルークの援護にあたり名誉の戦死をとげました。ギャヴィンはわたしのところへやって来て、ローグ中隊の一員になりたいと申しました」 ソーム「提督、アンティリーズ中佐は隠していますが、ギャヴィン・ダークライターはわずか一六歳、まだ子供です」 ウェッジ「つらがまえは一人前です」 アクバーは触髭をぴくりと動かした。 アクバー「申し訳ないが、諸君、外見で人間の年齢を判断することは、わしにとって至難のわざでな。しかしながらソーム将軍の言い分はもっともだ。そのダークライターとやらはいささか年が若すぎる」 ウェッジ「提督、腕利きの戦闘機パイロットが必要なときに、ギャヴィンをほしがらない指揮官が同盟軍にいると思われますか?ヴァース中佐なら躊躇なく採用したはずです」 アクバー「そうかもしれぬが、アンティリーズ中佐、きみの中隊と違ってヴァース中佐の部隊は死亡率がそれほど高くない。もちろんヴァース中佐はデス・スター攻撃には参加しておらんが」 アクバーは非難がましい口調になることなく、痛いところを突いた。ローグ中隊のリーダーは顔をしかめた。 ウェッジ「ギャヴィンがわたしのところへ来たのは、ビッグスとわたしが友人だったからです。わたしは彼に責任を感じています。ギャヴィンの成績をご覧になればソーム将軍も納得なさるはずです。彼なら三日もあれば<リデンプション>シナリオを突破できるでしょう。その資質は充分あるはずです。シスタヴァネンのシールとペアを組ませるつもりです。この二人なら仲良くやっていけるでしょう。ギャヴィンは身よりもなく新たなホームを求めています。お願いですからローグ中隊に入れてやってもらえませんか」 ウェッジは両手をひろげた。 アクバー「年齢の問題をのぞけば、この選択に異論はないのだね」 アクバーはソームに目をやった。ソームはウェッジを見つめてうなずいた。 ソーム「この件に関しては−ダークライターが<リデンプション>テストで好成績をあげさえすれば−アンティリーズ中佐の選択に異議を挟むつもりはありません」 ウェッジ“つまりXOの件では全面的に反対するということか−こいつは骨が折れそうだ” ウェッジ「ありがとうございます、将軍」 アクバー「ソロ将軍張りの皮肉には恐れ入った」 アクバー口をあけてモン・カラマリ独特の笑みをもらした。ウェッジは口もとをほころばせると、両手をうしろにまわして握りしめた。 ウェッジ「失礼いたしました。XOのほうもすんなり認めていただけると有り難いのですが」 提督は戦闘機中隊の指揮官を見つめた。 アクバー「現在、だれが務めておるのかね?」 ウェッジ「アリル・ナン大尉です。エンドアの戦いの英雄ナイン・ナンの妹にあたります。兄に劣らぬ力量の持ち主で、密輸業者時代にはナイン・ナンを助けて大活躍しておりました。彼女がいることでサラスタンの助力が得られますし、ソロスーブ政府の支援も期待できます」 アクバー「中佐、どの点に問題があるのかね?」 ウェッジは首をふった。 ウェッジ「まったくありません」 アクバー「ならば問題あるまい・・・」 ウェッジ「提督、たしかにアリルは優秀なパイロットです。隊員としてなら歓迎しますが、XOは困ります。わたしはパイロットの育成を手伝ってくれる人材がほしいのです。アリルや兄の腕前は天性のものです。したがって人を教えることはできません。アリルがXOになれば、本人はもちろん隊員たちも不満がつのり、収拾のつかない事態になるでしょう」 アクバー「適任者に心当たりがあるのかね?」 ウェッジ「はい、提督」 ウェッジはソーム将軍を見つめると猛反発を覚悟しながら切りだした。 ウェッジ「タイコ・ソークーを採用したいと思います」 ソーム「とんでもない!アクバー提督、ソークーを現役の飛行中隊に近づけるなどもってのほかです。刑務所の外にいるからといって信用できるとはかぎりません」 ソームは案の定いきり立った。ウェッジはすかさず反論した。 ウェッジ「刑務所!彼は罰せられるようなことは何もしておりません」 ソーム「あいつは信用できん」 ウェッジ「わたしは信頼しております」 ソーム「いいかげんにしろ、アンティリーズ、彼の過去はよく知っているはずだ」 ウェッジ「将軍、わたしの知るかぎり、タイコ・ソークーは英雄です−わたしなんかおよびもつきません。ホスでは余人に劣らず勇敢に戦いましたし、エンドアでもAウイングを操縦して、デス・スター防衛にあたっていたTIEファイターをみごと手玉に取りました。おかげでランドとわたしは宇宙要塞の中心部に入りこみ、炉心を吹き飛ばすことができたのです。バクラの戦いが終わると、みずから進んで極秘任務に志願しました。いいですか、将軍、TIEファイターを操縦してコルサントへ潜入するという危険きわまりない離れわざをやってのけたのですよ。捕まりましたが、脱出には成功しました。以上です」 ソーム「甘いな、アンティリーズ」 ウェッジ「は?」 ソーム「脱出と言ったが、逃がしてもらったのだろう」 ソームは鉄仮面さながらのいかめしい顔をしてみせた。 ウェッジ「エンドアのときもそうだったとおっしゃるのですか。将軍、あなたは根も葉もない疑いを抱いておられます」 ウェッジは怒りをなんとか抑えこむと顔をしかめた。ソームはそっけなく首をふった。 ソーム「なんとでも言え。だがな、きみやきみの部下を守るのがわたしの責務なのだ」 ウェッジ「わたしとて同じ気持ちです。タイコを起用すれば、部下のサバイバル能力は格段に向上するはずです」 ソーム「ご覧のとおり、彼は聞く耳を持ちません。ソークー大尉は危険人物なのに、それを認めようとしないのです」 ソームはうんざりした面持ちで両手を振りあげると、アクバー提督を見つめた。 ウェッジ「納得できる根拠を提示していただければ、わたしだって認めるのにやぶさかではありません」 アクバーは両手をあげた。 アクバー「まあまあ、諸君。アンティリーズ中佐、ソーム将軍の懸念はもっともといえる。多少なりとも保安措置を講じることができれば、将軍もきみの申し出に理解を示してくれるのではあるまいか」 ウェッジ「それならすでに考慮済みです、提督、ソークー大尉ともじっくり話し合いました」 ウェッジは指を折りながら説明をはじめた。 ウェッジ「演習でZ95ヘッドハンターを使用するさい、レーザー砲の出力を落とすことにしました。標的を吹き飛ばすのではなく光弾の痕跡が残る程度にとどめます。彼は自爆装置の取り付けにも同意してくれました。もし攻撃的な行動に出たり、指定された飛行コースから離脱した場合、リモコンで機を爆破できます。訓練のないときは保安要員か同僚の付き添いを必要とし、一人になる場合は禁足を義務づけます。必要ならばいつでも尋問に応じ、専用コンピューターのファイルや私信の公開にも応じます。食事の内容から住居の選定にいたるまで何もかも当局の指示にしたがうと申しております」 ソーム「おおいに結構です。それなりに効果はあるでしょう。しかし、わざわざ危ない橋を渡る必要はありません」 ソームは勢いよく進み出るとウェッジとモン・カラマリ提督のあいだに立った。アクバーはゆっくり瞬きした。 アクバー「ソークー大尉はいまの条件をすべてのんだのかね?」 ウェッジはうなずいた。 ウェッジ「彼は提督と同じで、根っからの戦士なのです。彼の経験と知識をパイロットたちに伝えることができれば、どれだけ役に立つことか。第一線への復帰はソーム将軍が絶対に認めてくださらないでしょうから」 ソーム「それは透明スチールに刻みこめるくらい明白なことだ」 ウェッジ「ですからこれからも戦いつづけるとしたらインストラクターになるほかないのです。彼にチャンスをあたえやってください」 アクバーは襟元に取り付けた小型コムリンクのスイッチを入れた。 アクバー「フィラ中尉(Lieutenant Filla)、ソークー大尉をわしの部屋へ連れてきてくれ」 モン・カラマリはウェッジを振り返った。 アクバー「彼はいまどこにおるのかね?」 ウェッジ「シミュレーター室にいるはずです」 ウェッジは足もとに視線を落とした。ソームは血相を変えた。 ソーム「なんだと?!」 アクバー「中尉、シミュレーター室におるそうだ。ただちに呼んでこい」 アクバーはコムリンクのスイッチを切った。 アクバー「どうしてシミュレーター室に?」 ウェッジ「今日はホーンが<リデンプション>シナリオの指揮をとることになっていました。タイコはほかのだれよりもTIEの性能に精通しております。ですからぜひともホーンと対決させたいと思いまして」 アクバー提督は口もとをわずかに引きつらせた。 アクバー「すでに思いどおり事を進めておるようだな、中佐」 ウェッジ「パイロットたちを鍛えあげるために必要と思われる手立てを講じているだけです。この件については慎重に対処しております」 ソーム「きみが本気で訓練生たちの身を気にかけているのなら、ソークー大尉をシミュレーター室に一歩たりとも立ち入らせなかったはずだ!」 ソーム将軍は腕組みをした。 ソーム「たしかにきみは新共和国の英雄かもしれん。しかしだからといって、われわれの安全をおびやかす権利はない」 ウェッジ“今日タイコを飛ばしたのは少々勇み足だったかもしれない” ウェッジ「わたしの判断ミスでした」 ウェッジは反省の色を浮かべてうなだれた。 |
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