反乱の夜明け #16-d |
年 代 | 出 来 事 | 場 面 | 参 考 |
---|
“まったく、タトゥイーンはゴミ捨て場みたいなところだ”チューイーと暗い夜の路地を歩きながらハンは思った。“ジャラス・ニブルの言ったとおりだ” ふたりの密輸業者は数時間前に着いたばかりだった。ジャバにもう少し時間をくれと頼むには、直接会ったほうがいい、ハンはそう決心したのだった。しかし、見通しはあまりよくない。いまのところ、ジャバと会う約束を取りつけようにも、彼はコムに出ようとはしない。それに<ファルコン>が収納してあるドッキング・ベイ94では、ローディアンのグリードがかぎまわっていた。あの間抜けはジャバがハンに賞金をかけたことを灰めかし、ここにいるのを黙っているかわりに、金をよこせと言ってきた。 ハンの思いを読んだように、チューバッカが静かに言った。ストリートの話では、あのローディアンのキッド、グリードは昔の賞金稼ぎウォーホッグ(戦争の虫)・ゴアとつるんでいる、と。 ハンは鼻を鳴らした。「チューイー、わかってるだろ、ジャバはあの間抜けを雇って、おれたちに脅しをかけてるだけさ。本当におれを殺したけりゃ、それができるやつを雇うはずだ。グリードは馬鹿すぎて、両手とレーザー・トーチがあっても自分の背中すら捜せないような男だ」 「フルルルーン・・・」そのローディアンに関しては、チューバッカの評価も低かった。 ハンは少し余分なクレジットがあったから、地元の賭けゲームを見に行くことにした。ジャバが全額返済は少し待ってやろうという気になるような、まとまったクレジットが稼げるかもしれない。それから必死になって残りのクレジットをかき集めれば− 彼らはクレイト・ドラゴン・ラウンジに入っていき、まわりを見まわした。店の隅では、思ったとおり、サバックのゲームが行なわれていた。 ハンはチューイーとそちらに近づきながら、ひとりのプレーヤーに目を留めた。整った顔の赤毛の痩せた男だ。「やあ!」ハンは叫んだ。「銀河は狭いな!景気はどうだ、ダッシュ?」 ダッシュ・レンダーは目を上げ、用心深く微笑した。「やあ、ソロ!チューバッカ!久しぶりだな。いいとこで会った。イリーシアでの悪ふざけのことを詳しく話してくれよ」 ハンはうめいた。ダッシュ・レンダーは空いている席に座るように示し、ハンとチューイーは座った。「おれも入れてくれ」ハンはひとつかみのクレジットを出しながら言った。「チューイー、おまえもやるか?」 ウーキーは首を振り、何か飲むためにバーに行った。ハンはレンダーをちらりと見た。「なあ、ダッシュ、イリーシアの襲撃のことを、どこで聞いたんだ?」ナー・シャッダでみんなにひどい扱いを受けたあとでは、まだ彼と話をしてくれる者に偶然出会ったのは嬉しかった。 「ああ、先週ズィーン・アフィットとカトヤ・ムブレにばったり会ったんだ。彼らが教えてくれたよ」 レンダーはカード・チップを配りながら言った。「彼らが一緒に仕事した反乱軍グループは、ちゃんと約束の分け前をくれたが、おまえと仲間だった連中は、誰ひとり報酬をもらえなかったと言ってたよ。本当なのか?」 ハンは頷いた。「ああ、本当だ。おれももらわなかったんだが、誰も信じてくれないだろうな」彼は顔をしかめた。「でもこいつは嘘じゃない。借りが返せなくて、ジャバはいまにもおれの首に本物の賞金をかけそうなんだ」 レンダーは肩をすくめた。「ツキがなかったな。おれは反乱軍グループとは関わりを持たない主義だ」 「おれだってそうだったさ」ハンは言った。「でもこれはうまい話だと思ったんだ・・・」 「ああ、カトヤとズィーンは大満足で、バンサの餌みたいにクレジットを使ってたぜ」レンダーは言った。 ゲームが始まって数分後、ハンは袖を強く引っぱられるのを感じた。見下ろすと、小さなチャドラ=ファンが立っている。「何だ?」 彼女はハンにキーキー言い、彼は顔をしかめた。チャドラ=ファンの言葉はよくわからないのだ。 「カーベが言うには、外で誰かがあんたを待ってるそうだ」レンダーが訳してくれた。 “ジャバだ!ついにジャバがおれのメッセージを受けとり、会う気になったんだ”ハンはそう思った。“誰か迎えをよこしたにちがいない。これで彼と話ができる、この窮地を逃れられる・・・” ちょうど負けていたハンはカード・チップを放り投げて立ち上がり、チューイーにグラスの中身を飲みほせと合図した。「よし、この手はおりる。あとで戻るかもしれんが」 片手をブラスターのグリップに置きながら、ハンとウーキーはストリートのイタズラ少女を追って裏のドアから路地に出た。彼らはそこにしばし立ち、周りを見まわしたが、誰もいなかった。 突然チューイーが急に向きを変えた。「ルルルーッ!」 “トラップだ!”ハンは同時にそれに気づいた。 コレリア人はブラスターをつかんだが、引き抜く前によく知っている声が言った。「動くな、ソロ。ブラスターを捨てろ。それからウークに、動けばふたりとも死ぬと言え。おれのコレクションに、ウークの頭蓋骨がもうひとつ欲しいと思ってたところだ」 「チューイー!」ハンは唸っているウーキーに鋭く言った。「動くな!」ハンはゆっくりとブラスターを抜き取り、埃っぽい路地にそれを落とした。 「ふたりとも向きを変えろ。ゆっくりとだ」 コレリア人とウーキーは従った。 ボバ・フェットは裏通りの薄暗い奥まったところに立っていた。これで一巻の終わりだ、ハンはそう思った。ジャバは本物の賞金稼ぎを雇って彼を始末することにしたにちがいない。ハンは神経を張り詰めた。が、フェットは撃たなかった。代わりに、人工的なフィルターを通した声が聞こえた。「力を抜がいい。おれは賞金のために来たんじゃない」 ハンは力を抜かなかった。フェットがカーベにクレジットを投げるのを驚いて見ていた。少女は急いで前に手を伸ばしてそれをつかむと、嬉しそうにさえずりながら暗がりの中に消えていった。 「賞金のためじゃないだと?」ハンは言った。 「フルルーフ?」チューイーもハンと同じくらい驚いて繰り返した。 「おまえに賞金がかかってるとジャバがグリードに言ったが、それはあの間抜けを利用しておまえに脅しをかけただけだ。ちゃんと返せ、とな。本当におまえを殺したければ、誰を雇うかわかるだろう?」 「ああ」ハンは言った。「たしかにな」彼はためらった。「で・・・あんたは何でここにいるんだ?」 「一時間前に着いた。おれは約束をしたら、それを守る男だ」 ハンは眉をひそめた。「何のことだ、フェット?」 「彼女は死んだ」ボバ・フェットは言った。「しばらく前に彼女と約束をしたんだ。もし彼女が死んだら、これから先ずっと連絡を待ち続けずに済むように、父親にそれを知らせる、とな。だが父親の名前を聞くチャンスがなかった。だからおまえに伝えにきた。サレンに伝えてもらえるように」 「死んだ?」ハンはこわばった唇で囁いた。「ブリアが?」 「そうだ」 ハンはまるでみぞおちを殴られたような気がした。チューイーが静かに同情の声を発し、ハンの肩に毛むくじゃらの手を置いた。相反する感情を抑えようとハンはしばらくそこに立ち尽くしていた。深い悲しみがまず心に湧いた。深い悲しみと後悔・・・。 「死んだ」ハンはぼんやりと繰り返した。「どうしてわかったんだ?」 「おれは帝国のデータネットにアクセスできる。ブリア・サレンは三六時間前に死んだ。帝国軍は彼女の死体を確認した。彼女の中隊は、情報部の任務の掩護をしていたんだ」 ハンは悲しみを呑みこんだ。“まさか犬死にじゃなかったろうな!”「彼らは目標を達成できたのか?」 「わからない」機械的な声がそう言った。「誰かが彼女の父親に伝えなきゃならん。彼女と約束したんだ・・・おれはいつも約束を守る」 ハンはぼんやりと頷いた。「おれがする。レン・サレンはおれを知ってるんだ」“彼はどんなに悲しむことか・・・”彼は熱い塊を呑みくだした。胸が痛む。チューイーが静かにうめいた。 「よかった」フェットは言い、影の中に一歩さがった。次の瞬間には、路地にいるのはハンとチューイーだけになった。ハンはゆっくりと手を伸ばし、ブラスターを拾った。ブリアの思い出が頭を駆けめぐった・・・。 “おれのことを考えたかい、ハニー?”彼は思った。“素早く、苦しまずに死ねたのならいいが・・・” ハンとチューバッカはのろのろと向きを変え、路地の出口に歩きだし、ストリートに出た。コム・ユニットを使わせてくれる人間を探さなければならない・・・とても重要なメッセージがあるのだ。 |
タトゥイーン Tatooine |
Rebel Dawn P.382 - P.386 |
NEXT : |