新たなる希望 #17 |
年 代 | 出 来 事 | 場 面 | 参 考 |
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サウンド:バックにモス・アイズリーの通り。 ナレーター:しかし、彼らが旅立とうとしているモス・アイズリー宇宙港のある町の通りには、帝国軍のストームトルーパーやそのスパイ、密告者たちが群がっている。 ベン:(近づき)まあ、ソロ船長の<ミレニアム・ファルコン>が、自慢にたがわず速ければ、これ以上面倒なこともなくオルデランに着けるだろう。私は・・・待て、ルーク。 ルーク:なぜ?どうしたんだい? ベン:誰かに見られているような気がする。 ルーク:こっちを見てるような人はいないよ。 ベン:ああ、私にも見えん。 ルーク:さっきのストームトルーパーたちが、まだ追いかけてくるのかな? ベン:いや、カンティーナの裏口を出る時についてきた連中は、別の方角へ向かった。 ルーク:それじゃ、思い違いじゃないのかい? ベン:さっきは強く感じたが、今はさほどでもない。 ルーク:だったら、そいつが誰にしろ、どこかへ行ってしまったんだろう。あなたが感じたとすれば、きっと誰かが見ていたんだ。どうすればいいかな? ベン:急ごう。ソロ船長に早く金を渡せば、それだけ早くタトゥイーンを離れられる。 ルーク:うん、僕もそのほうがいい。 ベン:船長にはキャッシュで二千約束したが、私には一クレジットの持ち合わせもない。あのランドスピーダーを売るしかないな。 ルーク:いいよ。どうせこの惑星には二度と戻らないんだから。 ベン:これでおまえに借りができたな、ルーク。しかし、私がおまえなら、将来のことをそんなにはっきり断定はしないぞ。 サウンド:R2のモーター音と3POの足音が近づいてくる。 3PO:(遠くから)ルーク様!ルーク様! R2:電子音を発する。 ルーク:R2!3PO!どこにいたんだ?スピーダーのそばで待ってろと言ったのに。 3PO:ルーク様、最初はお言葉どおりにしていたのです。ところがストームトルーパーの一隊がこのあたりを捜索しはじめたものですから、次の通りにある中古ドロイドの店で、商品の中に隠れる必要が生じまして。 ベン:(おかしそうに)で、それはどっちの考えたことかな? 3PO:私でございます。ひょっとしてR2の人をだます癖が伝染したのかもしれません。 ルーク:心配はいらないよ。おまえはただ、その、臨機応変なだけだ。 3PO:まあ、そう言っていただければ、さほど悪い響きはございませんが。 ベン:ストームトルーパーが捜索しているというのは、あまりよいニュースではないな。彼らはどっちに向かっていたのかな? 3PO:あちらでございます。 ベン:すると町の中心か。 ルーク:だけど、スピーダーを売るにはそっちに行かないと・・・買ってくれる店は全部そこに集まってるんだ。 ベン:では、行かねばならん。ソロ船長に払う金は何としても作らねばならん。 ルーク:でも、ドロイドたちはどうする?一緒に連れてはいかれないよ。あのへんはきっと帝国軍の連中がうじゃうじゃいる。 ベン:規定どおりの捜索パターンを取っているとすれば、ここと宇宙港の間はほぼ安全だろう。3POとR2は宇宙港で待っていればよかろう。 ルーク:どっちかが一緒にいたほうがよくないかい? ベン:スピーダーを売るにはおまえが必要だ。所有権を移転する必要があるからな。だが、帝国軍やモス・アイズリーのならず者たちの中に、おまえを一人で行かせるわけにはいかん。 ルーク:そうだね・・・ついさっき、カンティーナでも、僕の命を助けてくれたんだもの。3PO、R2と二人で宇宙港のドッキング・ベイ94に行って、僕たちを待っててくれ。 3PO:かしこまりました、ルーク様。 R2:口笛のような音を発する。 ルーク:ベンと僕はスピーダーを売ってくる。それが終わりしだい、僕たちもそこに行くよ。 3PO:私どものことはご心配なく! ルーク:ああ。頼りにしてるよ、3PO。 サウンド:ベンとルークがスピーダーに乗り込む。 ベン:(くすくす笑う)人間が自分に似せてドロイドを作った時は、それがどれほどの含みを持つか、深くは考えなかったのだろうな。R2と3POは、まったく奇妙な組み合わせだ。 サウンド:エンジンが始動し、回転速度があがる。 ルーク:僕もそう思いはじめてるところさ。ソロ船長とチューバッカはどう思う? ベン:ああ、あれも奇妙な組み合わせだ。あのロボ=トラックに気をつけろ、ルーク。 ルーク:ちゃんと見えてるから、大丈夫。 サウンド:トラックのあたりでスピーダーが加速する。 ルーク:カンティーナで、ハン・ソロとわかり合えたと言ってけど、あれはどういう意味だったんだい? ベン:ソロには見かけ以上のものがある。あの男はただのコレリア人の密輸業者でも、ちょっとした無法者でもないぞ。私にはわかる。それと同時に、あの男が実際の自分をうまく隠していることもな。それに気づいたことを、さりげなく彼に知らせただけだ。 ルーク:あんなに自慢ばかりしていたんじゃ、それを読みとる暇なんかなかったかもしれない。彼は僕たちをオルデランへ連れていけないと思ってるの? ベン:何とか連れていこうとするだろうな。彼は冷酷な荒くれ者のように振る舞ってはいるが、実際はそういう外見とはまったく違う男だと思う。私はそう言いたかったのだよ。それに、あのウーキー。 ルーク:チューバッカかい?ウーキーを見たのは初めてだ。彼が持ってたライフルとも弓ともつかない武器は何なの? ベン:ボウキャスターのことか?あれはウーキーが昔から使っている武器だ。 ルーク:それにすごい大男だ!僕は肩までも届きゃしない。 ベン:外見でだまされてはいかんぞ、ルーク。ウーキーはただ単にでかくて毛むくじゃらのヒューマノイドというだけではない・・・彼らには古代文化がある。ウーキー特有の緻密さもある。彼らは自然と密接なつながりを持ち、彼らなりの方法でフォースにも近しいのだ。 ルーク:フォースと? ベン:そうだ。ソロはただの犯罪者ではないな。さもなければ、ウーキーを相棒にしているわけがない。また、彼と一緒に銀河を放浪するようなウーキーがざらにいるとは思えん。チューバッカもよほどの変わり者だろうな。 ルーク:彼は信頼できるってこと?ハンのことだけど。 ベン:まあ、全面的に信じないほうがいいかもしれんな。それに、ソロ船長はあまり誘惑にさらしたくないタイプだ。だが、取り引きの約束事は守る男と見た。 ルーク:それだけで、僕たちには充分だ・・・オルデランに連れていってもらえればいいんだから。 ベン:ぜひそうなってほしいものだ。その左手にビークルを売り買いする店があるぞ。あそこなら、そこそこの値をつけてもらえるかもしれん。 ルーク:いいよ、あそこにしよう。 サウンド:スピーダーを操作し、減速する音。エンジンが止まる。が、通りの騒音はバックに残る。 ルーク:ここは動くものなら何でも買いそうだね。動かないものまでたくさんある。 サウンド:二人がスピーダーから降りる。 店主(ディーラー):(喉に何か詰まったようなカチカチいうかん高い声で話しながら近づく)いらっしゃい、人間のお客さん。 ルーク:このスピーダーを売りたいんだ。 ベン:正当な値段を付けてもらえればだが。 ルーク:うん、そうさ。これには二千四百クレジット払ってるし、そのあとずいぶん手を入れたんだ。せめて− 店主:千五百クレジットが精いっぱいだね、お客さん。 ルーク:千五百だって?ねえ、このランドスピーダーは見かけはたいしてよくなくても、最高の状態なんだよ。 ベン:二千以下では売れんな。 店主:現実的に考えるこったね、お客さん。みんなが欲しがるのはこんな古いのじゃなくて、もっと新しいやつだ。千五百でも、こっちは足が出るかもしれん。 ベン:だが、正当な値段ではないな。 店主:そう言われちゃ、寛大なとこを見せるしかないね、お客さん!よっしゃ、千六百だ。 ベン:(フォースを使って)まだ充分とは言えんな。 店主:まだ・・・充分じゃないんで? ベン:このスピーダーにはもっと価値がある。 店主:このスピーダーには・・・もっと価値があるね。 ベン:この若者は二千クレジットもらえる。 店主:お若いの、二千クレジットにしてやるよ。 ルーク:あの、それはどうも。 店主:ほら・・・登録移動のところに親指の指紋を押してくれ。 サウンド:登録機の低いうなり。 店主:これが代金だ。 ベン:(遠ざかりながら)行こう、ルーク。ありがとう。 サウンド:彼らの足音が遠ざかる。 店主:あたしゃぼけちまったのか?いつからあんなに簡単に人間の二人組にしてやられるほど、ヤワな昆虫になっちまったんだ? サウンド:しだいに消え、静寂。通りの騒音が消える。 サウンド:通りの音が高くなる。人混みを歩いていくベンとルークの足音。 ルーク:ベン、フォースにはものすごく利用価値があるね。だんだんわかってきたよ! ベン:緊急の場合でなければ、決してあんなことには使わなかった。よいか、ルーク。フォースの間違った使い方は考え得る最悪の結果を引き起こす・・・それを忘れてはならん。 ルーク:そうかな、あんな古いランドスピーダーが二千クレジットで売れたのは、最高の結果だと思うけど。XP-38が出てから、誰もあんなおんぼろには乗りたがらないからね。 ベン:二千あれば充分だ。残金はオルデランに看いてからソロ船長に払えばよかろう。とにかく、一刻も早くここを出ることだ。 ルーク:ハン・ソロは喜ぶだろうな。ずいぶん金に因ってたみたいだったから。 ベン:モス・アイズリーの誰かに借金があるのだろう。ここのアンダーワールドには相当したたかな連中がいるからな。そういう手合いは、借金を返さん連中にはかなりあくどいこともやってのける。 サウンド:ベンが立ち止まり、ルークも立ち止まる。 ルーク:どうかしたのかい? ベン:また感じた・・・誰かに見られているようだ。 ルーク:誰もいないみたいだけど。 ベン:ああ。誰だか知らんが、うまく隠れているな。 ルーク:だったら、どう− ベン:(遮り)できるだけ早くドッキング・ベイ94に行くとしよう。尾行をまいて無駄にする峠糊はない・・・ サウンド:通りの音がしだいに消えていく。 音楽:挿入。 チューイー:(離れて)高い声で吠え、挨拶する。 ハン:何?チューイーか!荷物は持ってきたか? チューイー:(近づく)続けざまにうなり、肯定の返事をする。 ハン:おまえがカンティーナを出たあと、グリードのやつがブラスターを手に現われたぞ。俺の体に焼け焦げを作ろうとしやがった。 チューイー:怒りと心配の入り混じった声を出す。 ハン:帝国のやつらが<ファルコン>に乗り込んできたときに捨てるはめになった、ケッセル・スパイスの積み荷ことで、ジャバ・ザ・ハットが腹を立ててるとさ。 チューイー:いきりたつ。 ハン:ああ、そう言ってやったよ。ジャバのやつが俺の首にでかい賞金を賭けやがって。おかげでこの界隈の賞金稼ぎが一人残らず俺たちを捜しまわってる。 チューイー:考え込むように鳴く。 ハン:ああ、しかもそれだけじゃ足りんとみえて、ジャバの命令でヒーターまで捜してるらしい。グリードが言ってたよ。 チューイー:不安そうに喉を鳴らす。 ハン:くそ、プリーチャーが手強いやつだってことぐらい、わかってるさ! チューイー:吠える。 ハン:グリードか?いや、あいつは馬鹿だ、ちらっと隙を見せやがった・・・不注意だな。ジャバとプリーチャーがちゃんとした葬式を出してやってくれるといいが。 チューイー:うなる。 ハン:ああ、このオルデランまでの仕事をさっさとやっつけ、金を手に入れたら、ジャバとプリーチャーに話をつけ− サウンド:神経質で早口の小柄なノン・ヒューマン、スクイークが近づいてくる。 スクイーク:(遠くから呼ぶ)ソロ!おい、ソロ! ハン:スクイークだ! チューイー:うなって質問する。 ハン:あいつが何の用かって?知るもんか。だが油断するなよ。 スクイーク:(近づく)ソロ、あんたとそのウーキーをずっと捜して、歩きまわっちまったぜ! ハン:どうやら見つけたようだな、スクイーク。で、何の用だ? スクイーク:ビッグ・バンジが会いたがってる。頼みたい仕事があるそうだ。 チューイー:吠えるようにうなる。 ハン:だったら、なぜ俺たちが客を取るまで待ってたんだ? スクイーク:この仕事はついさっき入ってきたばかりで・・・ ハン:バンジにこう言ってくれ。誰が− スクイーク:(遮る)前金で一万だぜ・・・ ハン:・・・じいさんと小僧と二体のドロイドなんか運びたいもんかってな。そうだろう、チューイー? チューイー:苛立たしげに喉を震わせる。 ハン:で、何だって、スクイーク。 チューイー:うなって反対する。 スクイーク:ウークは何を怒ってるんだ? ハン:べつに。なあ、ちょっと向こうで待っててくれ。 スクイーク:(遠ざかる)ああ、ハン、いいとも。 ハン:(低い声で)いったい何が気に入らないんだ? チューイー:短く答える。 ハン:あのじいさんがどうなろうと、俺の知ったことか。それにあの小僧も、ドロイドもだ。いいか、現実ってのはゲームとは違って、厳しいもんなんだ。(声を張り上げ)おい、スクイーク! スクイーク:(近づく)何だ、ハン? ハン:ビッグ・バンジに言ってくれ。<ファルコン>は彼のもんだとな。 スクイーク:そうこなくちゃな! ハン:で、条件は? スクイーク:明日入ってくるチャク=ルーツを、ここから− チューイー:吠えて遮る。 ハン:明日だと?俺たちはヤバイことになってるんだ。一刻も早くここを発たないと命が危ない! チューイー:同意する。 ハン:ジャバとプリーチャーが俺たちの首を狙ってるんだ。今頃は、おそらくストームトルーパーもな。バンジには他のやつを見つけろと言ってくれ。あばよ、スクイーク。まったく何を考えてるんだか。 チューイー:うなる。 ハン:ああ。中に入って、出発前の点検にかかるとしようぜ。 チューイー:低くうなって同意する。 サウンド:ドッキング・ベイのドアが開く。(声が反響する) ハン:あのじいさんとキッドはまだ何か引っかかるな。どこがどうとは言えんが、えらい疫病神みたいな気がするんだ。あの金がこんなに必要じゃなけりゃ・・・ サウンド:ドッキング・ベイの声が遠くからしだいに高くなる。 ハン:(囁く)聞こえたか?あれはヒーターだ!ならず者を引き連れて、ドッキング・ベイに来てるぞ! チューイー:低い声で鳴く。 ハン:ああ。荷物はそこに置いて、ドアに鍵を掛けろ。これ以上意外な客には会いたくないからな。 サウンド:チューイーは手にした荷物をおろし、ドアを閉める。くぐもったうなりと音をさせて、重いパワー・ボルトが起動し、鍵が閉まる。 ヒーター:(遠くで、濡れたしゃがれ声)聞こえるか、ソロ?その船から出てこい。おまえもウーキーもだ!出てこなけりゃ、こっちから入るぞ! ハン:(まだ囁き声で)行くしかないな。<ファルコン>に何かされちゃ大変だ! チューイー:低い声で抗議する。 ハン:負けずにはったりをかますしかない。いつでもボウキャスターを使えるようにしとけよ・・・ ヒーター:(遠くから。近づくにつれ、声が大きくなる)これが最後のチャンスだぞ、ソロ・・・出てこい!取り囲んでるぞ! ハン:おい、見張る方向が間違ってるぜ。 ヒーター:何だと?ソロ! サウンド:彼の手下が驚いてわめく。 ハン:なあ、あんたを待ってたんだ、ヒーター。 ヒーター:それは・・・まあ・・・当然だろうな、ハン。 ハン:俺たちは逃げも隠れもしないさ。そうだろ、チューイー? チューイー:大声でうなる。 ハン:そこを動くなよ、ヒーター。それに、ぐるりと回りに立ってるあんたのお友だちにも、うっかりブラスターに触らんように言っとくんだな。 ヒーター:おまえの評判に適切な敬意を表してるだけさ。ハン、おまえにはがっかりしたよ。おまえがなくしたケッセル・スパイスの積み荷の金をまだもらってないぞ。 ハン:ジャバには、ちゃんと払うと言ってある。 ヒーター:それに、何だって哀れなグリードをこんがり焼いてくれたんだ?あいつとは昔からずっと一緒にやってきたんだ! ハン:まあ、俺は飲み友だちにはちっと好みがうるさいのさ。グリードに俺を殺らせようとしたあんたも悪いぜ。 ヒーター:ハン、ハン。なぜわしがそんなことをする?おまえは密輸じゃ一番の腕利きだ・・・殺すには惜しい。グリードはおまえがなかなか借りを返さんから、わしらが心配してると伝えたかっただけだ。殺すつもりなどあるものか。 ハン:そうかい?やつはそのつもりだったぜ。 チューイー:怒って咆哮を放つ。 ヒーター:ハン、あんたにもわかるだろう?例外は認められんのだ。雇ったパイロットがみんな積み荷を捨て、金を返すかわりに空のポケットを見せてみろ。このヒーターはどうなる? ハン:あんたとジャバは、自分の首を賭けてるわけじゃないからな、ヒーター・・・俺たちは命がけで仕事をしてるんだ。 ヒーター:こっちはそのために金を払ってるんだ!しくじったら、損をする、それが商売ってもんだ! ハン:で、俺とチューイーを相手に派手に撃ち合うのが、得になると思うのか? ヒーター:おい、おい、ハン。誰もそんなことは・・・ ハン:撃ち合うなら、やるがいい。あんたの後ろには充分な銃がある。 チューイー:太い声でうなる。 ヒーター:いや・・・つまり・・・おまえとウーキーが出てくる前に、みんなにはこう言ってたんだ。二人とも殺すには惜しい逸材だとな。 ハン:まあな、金は払えるんだ。少しばかり時間さえくれればな。 ヒーター:ああ、今度の仕事だな。カンティーナで誰かと商談をしていたことは聞いてる。その連中はいくら払うと言ってるんだ? ハン:充分借金を帳消しにできる金額さ。あんたが知る必要があるのはそれだけだ。 ヒーター:モス・アイズリーじゃ、妙なことが起こってる。通りにはストームトルーパーがうじゃうじゃいるし、どこを見ても帝国軍のスパイだらけだ。その理由がいったい何なのか、わしの情報源ですら突き止められん。だが急にここを離れたいという金払いのいい客が、突然現われたのと、何か関係があるのかもしれんな。 ハン:だから? ヒーター:帝国軍と取り引きすれば、もっと金になるかもしれん。 チューイー:この言葉に恐ろしいうなり声を発する。 ハン:おいおい、ヒーター。客を帝国に売るのは、俺たちの流儀に反するんだ。そいつはあんたも知ってるはずだ。 ヒーター:そんなことじゃ、おまえもウークもいつまでたっても、うだつが上がらんぞ。 ハン:とんとんで満足って場合もあるのさ。で、俺の流儀でやらしてもらえるのか、それともまだ俺とチューイーを相手にやり合うつもりか? ヒーター:まあ、何はともあれ、わしは商売人だ。待ってもいいが、その分うまみを上乗せしてもらうぞ。二五パーセントで手を打とう。それでしばらく待つ。と言っても、長びいては困るが。 ハン:いいだろう。 ヒーター:だが、今度約束を違えたら、もう“二人で一クレジット”の安いやつは使わんぞ。今度はボバ・フェットをさし向ける。 ハン:そう興奮するなって・・・金は払う・・・俺がそうしたいからだ。さあ、そうと決まったら、さっさとここを出てってくれ。 音楽:高くなる。 サウンド:モス・アイズリーの通りの騒音が高まり、低くなって、R2のうなりと、3POの哀れっほい声が聞こえる。 3PO:すぐ先がドッキング・ベイ94みたいだぞ、R2。 R2:さえずる。 3PO:ルーク様の姿はどこにも見えないな。ベイの中に入って待ったほうがよさそうだ。 サウンド:ドアに向かうサーボの音と足音。3POがドアを開けようとする。 3PO:鍵が掛かってる。どうしたものかな。 R2:電子音を発し、提案する。 サウンド:R2の手が素早く軽くドアを叩く音。 3PO:よせ、やめろ。ドアを叩いてると、目立ちすぎる。できるだけ人目につきたくない。 R2:ぶつぶつ言う。 サウンド:ドアを叩く音が止まる。 サウンド:遠くに行進してくるブーツの音。 3PO:見ろよ、R2!ここにもストームトルーパーがいるぞ! R2:電子音を発する。 3PO:だが、隠れる場所などあるものか!ここは行き止まりだ。 R2:ふん、と鼻を鳴らすような音。 サウンド:R2のホイールが遠ざかる。 3PO:待てよ!どこへ行くつもりだ? サウンド:3POの足音がR2を追いかけ、追いつく。 3PO:その店のドアをどうするつもりだ? R2:独り言のようにさえずり、3POを無視する。 サウンド:R2が軽くドアを叩く。 3PO:R2、とうとう頭がおかしく− サウンド:パワー・ドアが開く音が遮る。 店主:何の用だね、お二人さん? 3PO:あの、ええ、その・・・ R2:しつこくさえずる。 3PO:ああ、そうか。ご主人、相棒がたった今説明したように、私どもは整備の仕事はないか聞きにうかがったのです。 店主:何?整備だ? 3PO:ええ、さようでございますとも。私どもはスカイウォーカー・テクニカル・メンテナンス・サービスの社員でして。 店主:そんな名前は聞いたこともないな。 3PO:もちろんですとも。できたてのほやほやでございますから。そのため、このあたり一帯を回り、目下、宣伝のためのキャンペーン中でして。 店主:宣伝キャンペーン? R2:せわしなく電子音を発する。 3PO:ああ、わかってるさ。 店主:何だと? 3PO:つまりですね。今日はただでお試しサービスをさせていただいております。この相棒と私はお客様のお望みの器具の修理でも、調整でも、システム点検でも、無料でさせていただきます。これはキャンペーン中の特典なのです。 店主:あとにしてくれ。ちょうど出かけるとこなんだ。 3PO:ですが、ご主人・・・ R2:横から口笛のような音を出す。 3PO:相棒に言われて思い出したのですが、これは今回かぎりのサービスでして。こちらでご用がなければ、お隣に移らせていただきます。 店主:むむ。そう言えば、エネルギー旋盤のシンチが・・・ 3PO:私どもにお任せいただければ、あっという間に新品同様でございますよ。なあ、R2? R2:勢いよく鳴く。 店主:いいだろう。やってくれ。二、三分で戻ってくる。 3PO:お客様の機械は新品同様になりますとも! 店主:これまでと同じにしてもらえれば、それで結構。 サウンド:店主が立ち去り、足音が遠ざかる。 3PO:決して後悔なさるようなことはありません。 サウンド:ドロイドたちがドアの中に入る。 サウンド:捜索隊のブーツの足音が近づく。大声で命令する声。 3PO:ストームトルーパーだ!急げ、R2。ドアに鍵を掛けろ! R2:まくしたてる。 サウンド:パワー・ドアがうなりを発して閉じる。 ストームトルーパー1:(近づく)よし、おまえたちは通りの向こう側を調べろ。私はこのドアを見る。 サウンド:ストームトルーパーがドアのスイッチをひねり、それから装甲服の手でノックする音。 ストームトルーパー2:(少し離れて)こっ ちのドアは全部ちゃんと鍵が掛かっています。 ストームトルーパー1:こっちもだ。よし。引き返して、次の通りに移ろう。 サウンド:靴底にすべり止めの付いたブーツの音が遠ざかっていく。 サウンド:ドアが低いうなりを発して開く。 3PO:ありがたい。立ち去ってくれたか。まったく、おまえとここに残るより、ルーク様と一緒に行ったほうがどんなにましだったか。どうしてこんなに物々しい捜索が行われているのか知らないが、おまえのせいに決まってる。 R2:鼻を鳴らす。 3PO:言葉に気をつけろよ!だいたいその態度が・・・見ろ!ドッキング・ベイ94のドアが開くぞ!だが、今出てきたあの生物は何者だ? R2:興奮して電子音を発する。 3PO:ルーク様だと?どこに? R2:ピーピー鳴いて答える。 3PO:ああ!(声をかける)ルーク様!私たちはここです、ルーク様! ルーク:(近づく)落ち着けよ、3PO。何もわめかなくてもいいよ。 3PO:すみません。でもルーク様のことが心配だったものですから! ルーク:二人とも大丈夫かい?ベイの中で待ってればよかったのに。 3PO:ついさっきまで鍵が掛かっておりまして。あれからR2と私がどんな− ベン:(遮る)その話はあとだ。できるだけ早くここを出なくてはならん。 ルーク:まだ尾けられてるのかい、ベン? ベン:ああ、ほぼ確実にな。一、二度それらしき姿を見た。かなり後ろから尾いてきていた。行こう。 ルーク:チューバッカがベイのドアのところで待ってる。 チューイー:一声吠えて挨拶する。 ベン:(近づく)皆揃った。それに金もできた。いつ出発できる? チューイー:うなる。 ベン:それはよかった。では、そうしてもらおう。 サウンド:声が反響する。 ルーク:<ミレニアム・ファルコン>を見るのが楽しみだな。ハンがあれだけ自慢していたんだから。 ベン:密輸業者の宇宙船だ、惚れぼれするほど美しいというわけにはいかんぞ。 チューイー:おかしそうに低くうなる。 ルーク:どれどれ・・・あれが宇宙船だって?彼が言ってた有名な<ミレニアム・ファルコン>だって?ガラクタの塊じゃないか! ハン:(近づく)こいつは光速よりコンマ五も速く飛べるんだぞ、キッド。耐用期間と質量の比率も、このあたりじゃダントツだ。帝国軍のどんな宇宙船からも逃げられるし、シールドだって法の規定をはるかに超える強力なやつだ。 ルーク:だけど、宇宙を飛んだらバラバラになりゃしないかい? チューイー:歯をむいてうなる。 ハン:言葉に気をつけろよ、キッド。俺たちは<ファルコン>をけなされるのは好かんのだ。こいつは見かけはよくないかもしれんが、肝心なところはバッチリだ。そうだろ、チューイー? チューイー:うなって同意する。 ハン:それにいくつか特別の改造もしてる。(チューイーに向かって)コクピットに入って、航行前の点検を始めてくれ。 チューイー:うなる。 ルーク:わかったよ。これがどれだけ速く飛べるか見せてもらおうじゃないか。 ハン:(少しばかり不安そうに笑う)ちょっと待て、ボーイ。まだ約束の金をもらってないぞ。俺の記憶が確かなら、キャッシュで二千だ。今それをもらっといたほうが、お互い楽しく旅ができるってもんよ。 ベン:いいだろう、ルーク? ルーク:これが約束の金だ。 サウンド:ハンがキャッシュを鳴らし、ポケットに突っ込む。 ハン:(満足して笑う)不思議なもんだ。急に気分がよくなったぜ。 ルーク:数えなくてもいいのかい? ハン:あんたらを疑ってるとでも思ってるのか?それに数える時間はたっぷりある。さあ、少しばかり急いでるんだ。乗ってくれれば、すぐにも出発するぜ。 ベン:ソロ船長、われわれは尾行されていたようだ。 ハン:そんな時は、とっとと空に飛び上がるにかぎる。ランプを上がって、右手だよ、お二人さんにドロイドさん。前部船室でゆっくりしてくれ。俺がケーブルを解いたら出発だ。 ベン:ありがたい。さあ、ルーク、R2、3PO。 R2:おとなしく鳴く。 サウンド:彼らがランプを上がりはじめる。 3PO:はじめまして、ソロ船長。お会いできて嬉しく存じます。 ハン:くそ・・・いいか、俺は人間に話しかけてくる機械ってやつはあまり好きじゃない。みんなと一緒にさっさと上がれ。 3PO:はい、そういたします! ハン:(つぶやく)ドロイドときたら! サウンド:ケーブルが解かれ、横に投げやられる。 ハン:それにあのこざかしいキッド!このおかしなグループをまとめている化石みたいな老人もだ。何だってごくふつうの、簡単な仕事にありつけないんだ・・・俺だけがいつも貧乏くじを引かされるんだ・・・? ストームトルーパー1:(遠くで)あの宇宙船を止めろ! ハン:おっと、大変だ。ストームトルーパーだ! ストームトルーパー1:あいつを撃て! サウンド:遠くでブラスターの発射音。船体にあたってはじける音。 ハン:おい、こいつは俺の船だぞ!そっちがそういうつもりなら・・・ サウンド:ハンが撃ち返す。 ハン:うおおおおおっ!行くぞ、チューイー! サウンド:ハンがランプを駆け上がり、鈍い音を立てて、急いでそれをたたむ。メイン・ハッチがシュッと音を立てて閉まり、銃声を遮断する。 ハン:(わめく。彼の声が<ファルコン>の隔壁に反響する)よし、チューイー。ここから出ようぜ!デフレクター・シールドのスイッチを入れろ! ハン:前部船室にいるお客さんよ、ベルトを締めてくれ!尾行されてたってのは本当だった。すぐ飛び立つぞ。 サウンド:チューイーがうなる。ハンがコクピットに入っていく と、計器の音が聞こえる。彼は体を投げだすように操縦席に着く。 ハン:エンジンは温まったか? チューイー:短くうなる。 ハン:まあ、それで何とかするしかあるまい。とにかく、一刻も早くここを出るこった。 チューイー:不服そうにうなる。 ハン:いつから離床許可が必要になったんだ?いいから行け! サウンド:<ファルコン>のエンジンが轟音を発し、船体が振動し、音を立てて激しく揺れる。ハンとチューイーが歓声をあげる。 チューイー:一声吠えて尋ねる。 ハン:いや、いや、全速で大気圏を通過しろ。下の連中に狙いを定められると困る。 サウンド:船がうなる。 チューイー:高い声で吠え、無事脱出できたことを喜ぶ。 ハン:(笑いながら)あの装甲服の間抜けどもも、今頃少しは考えてるだろうよ!航行姿勢を調整しろ、チューイー。 チューイー:喉を鳴らす。 ハン:何だと?どのセンサーだ? チューイー:さっきの言葉をくり返す。 ハン:インペリアル・スター・デストロイヤーだ。全速でこっちに向かってくるぞ。何てこった! チューイー:うなる。 ハン:ああ。あいつらは予想以上にヤバイ客だったらしいな。デフレクター・シールドを後部に集中しろ。光速にジャンブする計算ができるまで持ちこたえるんだ。 チューイー:おとなしく鳴いて従う。 サウンド:ボタンを押したり、スイッチを入れる音、計器がそれに応じる音。 ハン:よく目を開けてろよ、チューイー。戦艦がもう二隻増えたぞ・・・俺たちの行く手を遮る気だ。 チューイー:驚いて鳴く。 ルーク:(離れた場所から)どうかしたのかい? ハン:歓送パーティーさ。どうした、おまえは招待状をもらってないのか? ベン:インペリアル・スター・デストロイヤーだ。 ハン:ああ、そのとおり。しかも、敵はどうでもこっちの尻の皮を剥ぐつもりだぞ。 ルーク:さっさと逃げ切ればいいじゃないか。こいつは速いんじゃなかったのかい? ハン:言葉に気をつけろよ、キッド。さもないとタトゥイーンに向けて放り出すぞ! ルーク:撃ってきたぞ! サウンド:レーザー弾がシールドにあたり、<ファルコン>がぶるっと震える。ハンたちも揺られ、警報が鳴りだす。 チューイー:うなる。 ハン:よし、相棒。しっかりつかまってろ!こいつがうまくいけば、もう目的地に着いたようなもんだ! チューイー:励ますように鳴く。 ハン:行くぞ! サウンド:エンジンのピッチがぐんぐん上がり、ハイパードライブに切り替わる。とたんに雷のようなレーザー弾の音がやむ。 全員:歓声をあげる。 音楽:挿入、低くなる。 |
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