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反乱の夜明け #7-b
幕間 1 :
コーポレート・セクター

年 代 出 来 事 場 面 参 考


  ズボンしかはかず、裸足のまま、ハン・ソロはジェッサの小さなアパートの寝室を出た。彼女の父ドクが率いるアウトロー・テック基地にあるこのアパートは、ぞっとするほど実用的だったが、ドク自身の住居もジェッサの住居も、驚くほど快適で家具が揃っていた。
  ハンはあくびをして頭を掻き、ますます髪の毛をくしゃくしゃにした。それから音を立てて優雅なカウチに腰をおろし、大きなビジョン・ユニットに信号を送った。   スクリーンにはコーポレート・セクター・オーソリティからの公式のニュースが流れはじめた。ハンは皮肉な微笑を浮かべながらそれに目をやった。オーソリティは日に日に悪くなっていく。そのうち帝国と同じくらい市民を弾圧するようになるだろう。
  だが、少なくとも<ファルコン>は最高の状態だった。逮捕されてスターズ・エンド刑務所に移される前に、ドクが<ファルコン>のハイパードライブを改良してくれたおかげで、いまやハンの船はポイント五を超える光速を出せるようになっていた。この速さがあればインプのどんな船からも逃げられるぞ、ハンは自惚れながら思った。“オーソリティの船からも、だ”
  加えてジェッサは、父親をスターズ・エンド刑務所から救出できるように、ハンがオーソリティのファイターと戦ったときに損傷した機器を、すべて新しいセンサー・セットとディッシュに交換してくれた。
  また首尾よくドクを救出したあとは、感謝のしるしに、新品の誘導システムをつけ、YT-1300が被ってきた船体の破損箇所もすっかり修理してくれた。ハンは<ファルコン>が新品に見えるように、塗装しようかとまで考えたが、この思いつきは却下した。<ミレニアム・ファルコン>のくたびれ果てた外見は、敵の意表を衝く。これは<ファルコン>にとっては、大いに役に立つ長所のひとつだ。
  薄汚い古いフレイターが、銀河で最高の技術者の手で特別に改良された軍用クラスのハイパードライブや、精巧なセンサー・セット、最高のジャミング装置、そのほかハンが愛する<ファルコン>に取り付けたもろもろの装置を搭載しているとは、誰ひとり思わないだろう。
  ジェッサはまだ眠っていた。ハンは椅子に背をもたせ、テーブルの上に足をのせて、ジェッサのことを考えた。彼女はこのコーポレート・セクターで知り合った最高の女性だ。ふたりは一緒にずいぶん楽しんだ。
  ついこのまえも、近くの宙域の豪勢なカジノに<ファルコン>を飛ばし、目いっぱいおしゃれしてギャンブルに熱中した。ジェッサはブロンドの髪をワイルドで斬新なスタイルにカールさせてあざやかな赤の縞を入れ、買ったばかりの体にはりつくような素敵な赤いドレスを着ていた。ハンは彼女と一緒のところを見られるのが自慢だったし、きみはこのカジノの誰よりも美しい、と請けあったものだ。
  ニュース・ビジョンはコーポレート・セクターの報告から、帝国からの短い報告に変わった。パルパティーンの部隊がまたべつの惑星の、またべつの暴動を鎮圧したのだ。ハンは口を歪めた。“またか・・・”気がつくと彼は、サラのことを考えていた。彼女はもう怒っていないだろうか?いや、まだ怒っているにちがいない。彼女がここにいなくてよかった。ジェッサと一緒にいるところを見られたりしたら、それこそたいへんだ。嫉妬深いタイプだからな。それにタフな女だ。ジェッサもそうだ。ふたりが顔を合わせるチャンスがありそうもないのは、ありがたいことだ。
  彼の思いは自然にサラから、ランドやジャリク、シャグ、そしてマコに移った。彼らはどうしているだろう?ハンはジャバにさえ、少しばかり感傷的な愛情に近いものを感じた。あのハットのリーダーは彼の代わりを見つけるのに苦労していることだろう。帝国領に戻れば、両腕を広げて歓迎してくれるにちがいない・・・ハンはハットの体臭を思いだし、顔をしかめた。
  スクリーンではさっきとは違う帝国の短いニュースが流れていた。帝国はアウター・リムの反乱軍は完全に鎮圧されたと発表している。“ふん、とんでもない。わざわざこんな発表をするってことは、あそこがインプの側にとっちゃ、かなりの苦痛の種だってことだ”
  ひょっとするとブリアも、インプの部隊を苦しめているひとりか?・・・それとも、彼女はまたスパイ稼業に戻ったのか?
  ハンは自分がナー・シャッダを恋しがっていることに気づき、ため息をついた。コーポレート・セクターは楽しい場所だったし、冒険や儲け口もたくさんあったが、故郷ではない。
  このへんで帝国領に戻るか?少なくとも、この基地を出て、コーポレート・セクターで何か(つまり儲け口)を探す潮時だろう。たしかにジェッサには、彼女とドクの反オーソリティ運動を手伝うと約束した。しかしそれは危険かもしれない。それに彼はジェッサに借りがあるわけでもない。危険をおかし、父親を救出したんだからな。だが、あれはほとんどチューイーのためだったぞ。彼のささやかな良心が心の奥でつぶやいた。パルを刑務所なんかに入れておけるものか。
  しかし・・・長続きしないとはわかってはいても、ここの暮らしはとても快適だった。ジェッサとも、うまくいっている。ふたりで楽しいときを過ごしている。出発をもう一か月延期するくらいは・・・それとも二か月・・・いや、三か月・・・。
  「ハン?」寝室から眠そうな声が聞こえた。
  「ここにいるよ、ハニー。ニュースを見てるんだ」ハンは言った。彼はビジョンを消し、小さなキッチンに入ってジェッサのために熱いスティム茶を入れた。彼女はこの輸入茶がすっかり好きになったのだ。


反乱の夜明け
P.155 - P.158
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Last Update 01/Jul/1999