反乱の夜明け #16-b |
年 代 | 出 来 事 | 場 面 | 参 考 |
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「ここから出られる望みはない、そうですね?」 ブリア・サレン中佐は、瓦礫の山の陰に身をかがめ、ブラスターから使いきったパワー・パックを取りだしながら、囁くようなこの質問を無視した。少なくとも無視しようとした。パックが出てこない。ブラスターを見ると、この数分間、酷使しすぎてパワー・コネクタが溶け、空のパックを取りだすことができなくなっていた。 彼女はぼそっと毒づき、自分の横の死体に這い寄った。ジェイス・ポールの顔は、激しい怒りとともに凍りついていた。彼はおそらくは望みどおりに、戦死したのだ。彼女は彼の武器をつかみ、死体の下からそっと抜きだした。が、途中で銃身が壊れているのが見えた。これも役に立たない。 レッド・ハンド中隊のわずかな生き残りをちらっと見て、ブリアは言った。「誰か、できたらわたしを掩護して。何か武器を探してくるわ」 ジョアーンが頷き、親指を上げた。「いいですよ、中佐。いまあそこには動くものは何も見えません」 「わかったわ」ブリアは言った。役に立たない武器を横に放り投げ、彼女は瓦礫の向こうを注意深く見た。それからこっそり横に滑り、その陰から出た。怪我を負っている脚が支えてくれるかどうかわからなかったので、立ち上がろうとはせず、四つん這いになって、体を低くし、彼らが最後の抵抗を続けている、半分破壊された帝国軍通信センターの外壁に開いた穴から外に出た。 何メートルか進むと、まだブレストプレートの穴から煙が出ている帝国軍の兵士が横たわっていた。 ブリアは素早く這いより、彼の武器と予備のパワー・パックを剥ぎとった。だが、この男は撃たれる前にグレネードをすべて使い果たしていた。“残念だわ・・・グレネードがいくつかあればかなり役に立ったのに” ブリアはその男の装甲服を奪うことも考えたが、彼はこれを着ていても死ぬはめになったのだ。 立ち入り禁止の惑星トプラワにある、ここ帝国軍のコム・センターの残骸の外では、音も中よりよく聞こえるし、楽に呼吸できる。戦いの悪臭は涼しい夜の風にとって代わっていた。ブリアは落ちてきたパーマクリートの塊の後ろに隠れ、勇気を出して何秒かヘルメットをとり、汚れた顔を拭いた。優しい風が汗ばんだ髪を心地よく冷やしてくれる。彼女はため息をついた。最後にこんな涼しくて気持ちのよい風を感じたのは、トゴリアだった。 “ハン、どこにいるの?”彼女はいつものように思った。“いま何をしているの?” ハンはわたしがどういう最期を迎えたか、知ることがあるだろうか?もし知ったら、悲しんでくれるだろうか?まだわたしを憎んでいるのだろうか?彼女はそうではないことを祈ったが、もうそれを知る手立てはない。 ブリアはイリーシアでのあの日を思いだし、もっと違う展開であったら、と願わずにはいられなかった。でも・・・もう一度同じ立場に置かれたら、違う道を選ぶだろうか? 彼女は悲しそうに微笑んだ。“おそらく選ばない・・・” 彼女が集めたクレジットは役に立ち、それが直接この任務につながったのだった。トーバルやほかの反乱軍司令官たちは情報部員のチームをラルティアに潜入させ、帝国がトプラワの記録センターに、新しい秘密武器の重要なプランを送ることを突き止めた。 トーバルはこの任務について、“生還できるかどうかわからない”、おそらく“捨て駒になる”と正直に打ち明けた。 ブリアはこうなることを承知で、進んで引きうけたのだ。この任務には、最高の部隊が必要だった。そして、レッド・ハンド中隊なら任務を果たせる自信があった。 そして彼らは任務を果たした。 これは、レジスタンスの攻撃では最大規模の反帝国攻撃で、帝国群軍の最新秘密兵器のプランを送信するために計画された調整攻撃だった。ブリアは細部まで知っていたわけではないが、トプラワの帝国軍通信センターを襲い、通信技術者が盗んだプランを反乱軍の外交艇に送信するあいだそこを占拠するのが彼女の任務だった・・・そのコレリアン・コルヴェットは“事故”で、この立ち入り禁止星系を通ることになっていた。 情報部チームがトプラワで通信技術者が送信するあいだ、インプを撃退する志願兵が必要だとトーバルが言ったとき、彼女はためらわなかった。「レッド・ハンド中隊が行きます」彼女は言った。「わたしたちならその任務を遂行できます」 彼女は戦いの修羅場が街灯にぼんやりと浮かぶ広場に目をやった。死体、横倒しになったグラウンド・カー、大破したスピーダー・・・ここはめちゃくちゃだ。 イリーシアはもっとひどかったろう・・・そう思うとブリアは、自分があの惑星のコロニーを破壊したひとりであることを誇りに思った。ちらっと上空を見上げながら、彼女は<リトリビューション>のことを考えた。彼らとは接続不能になっている。おそらくいまごろは− “任務に戻らなくては”彼女はそう思い、大破した通信センターに這い戻った。 ヘビー・リパルサーリフト・ユニットの太い唸りが後ろから聞こえ、ブリアは壁の後ろに障れて覗いた。目を上げると、荒れ果てた広場のパーマクリートの上に浮いている大きな長方形の装甲板に、かすかな光が反射しているのが見えた。帝国軍の重装備の“フローティング・フォートレス(浮遊要塞)”クラスのユニットが、通信施設とセンサー・タワーの残骸の後ろの、安全な場所に舞い降りるのが見えた。明らかに、レッド・ハンド中隊・・・またはその名残・・・に、新たな攻撃を仕掛けてくるつもりだ。 ブリアは素早く後ろに這い戻り、残りの兵士たちに言った。 「いいこと、みんな」彼女はバリケードの後ろにいる生き残った者たち−ほんのひと握りだ!−にパワー・パックを渡しながら言った。「また来るわ。いいこと、できるだけ長く阻止するのよ」 彼らは何も言わず、ただ頷き、応戦の準備にかかった。ブリアは彼らを誇りに思った。彼らはプロだ。献身的なプロだ。 “もうそんなに長くはないわ”、彼女はバリケードの後ろの、敵に狙いをつけやすい場所を探しながら思った。「みんな・・・」彼女は言った。「みんなララバイは持ってる?」 同意を示すつぶやき。ブリアは自分のカプセルを調べた。それは首を回し舌を出せば飲めるように、軍服の襟につけてある。何といっても、そのときが来たとき、腕が使えるとはかぎらない。 “さあ、来なさい。待たせるのは無礼よ” |
トプラワ Toprawa |
Rebel Dawn P.375 L.28 - P.379 L.16 |
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