反乱の夜明け #16-a |
年 代 | 出 来 事 | 場 面 | 参 考 |
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六日後、貸した金を何人かから掻き集めようとして失敗したハンは、ナー・シャッダに戻った。ここには帰ってきたくなかったが、もう友だちから金を借りるしか手がなかった。 あの悪夢のランに関わっていた誰か・・・インプの将校か兵士・・・が、何が起こったか吹聴してまわったとみえて、彼の仲間の密輸業者たちは、畏敬の念と恐怖の入り混じった目で彼を見ていた。 畏敬の念は彼がランの新しい記録を作ったため、恐怖は、ジャバがもとお気に入りのパイロットに、大憤慨しているという噂のためだった。 シャグはナー・シャッダにはいなかった。ハンはそれを知ったとき思わず毒づいた。シャグなら有り金を掻き集めても貸してくれるのがわかっていたからだ。 ハンはあちこちに寄り、昔の貸しを思いださせ、何とか二千クレジット集めることができた。しかし、イリーシアの仕事に参加した船長たちが手痛く裏切られた噂が広まっているせいで、ハンが近づいただけで目をそらす者も多かった。 ハンはついにランドの住居を訪ねた。行きたくはなかったが、そうするしかなかったのだ。 彼がドアをノックすると、ランドの眠そうな声が中から聞こえてきた。「誰だ?」 「ランド、おれだ、ハンだよ」 足音が聞こえ、突然ランドがドアを開けた。ハンがしゃべる間もなく、ギャンブラーはハンの顎に強烈なパンチを食らわし、彼を廊下の反対側に吹っ飛ばした。ハンは壁に叩きつけられ、ずるずると滑り落ち、しりもちをついた。 ハンは顎をさすった。目の前に星が見える。だが、彼は何とかしゃべろうとした。ランドはのしかかるようにそのそばに立った。「何て厚かましいやつだ!イリーシアでおれをあんな目に遭わせたあとで、ナーフみたいにのこのこやってくるとは!」彼は怒鳴った。「撃たれないだけありがたいと思え、この卑劣な、見下げ果てた、裏切り者め!」 「ランド・・・」ハンはしゃがれ声を押しだした。「誓うよ、彼女があんなつもりだったとは知らなかったんだ。本当だ・・・」 「ああ」ランドは嘲笑った。「そうだろうとも!」 「無実じゃなければ、こんなふうにここに来ると思うか?」ハンはつぶやいた。顎の動きがぎこちない。だんだん腫れてくるのがわかった。「ランド・・・彼女はおれのこともまんまとだましたんだ。おれも何ひとつもらっちゃいない。何もな!」 「そんなことが信じられるか」ランドは冷たく言った。「たとえ信じたにせよ、“いいざまだ!”と思うだけさ。おまえらはお似合いだよ!」 「ランド、おれはジャバのスパイスを失ったんだ。追いつめられてる、バディ。クレジットを貸して−」 「何だと?」ランドは両手でジャケットの襟をつかみ、ハンを立たせて壁に叩きつけた。そして浅黒い顔をハンの顔に突きつけた。「金を借りるためにここに来ただと?」 ハンは何とか頷いた。「ちゃんと返す・・・約束する・・・」 「いいか、ソロ」ランドは怒鳴った。「おれたちは友だちだった。だから頭を吹き飛ばすのはやめておく。だがもう二度とおれに近づくな!」 もう一度壁に叩きつけると、ランドはハンを放した。ハンはまたずるずると壁を滑った。ランドはかっかしてアパートに入り、勢いよくドアをバタンと閉めた。ロックがかかる音が聞こえた。 ハンは痛みをこらえ、ゆっくり立ち上がった。顎がずきずきし、血の味がした。 “くそ、ここもだめか”彼は閉まったドアを見ながらそう思った。“これからどうする?” |
Rebel Dawn P.373 L.27 - P.375 L.27 |
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