新たなる脅威 #17 |
年 代 | 出 来 事 | 場 面 | 参 考 |
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地面が唸り、うねって、砕けた岩が大波のように彼らの前に立ちはだかり、ビルがストリートに崩れ落ちる。アナキンはランドスピーダーを傾け、スロットルを押しだして、落石や跳ね飛ぶ石のあいだを縫いながら、恐怖と苦痛に悲鳴をあげる人々を矢のように通過した。北の検問口に立っているサーンピダル・シティ・ガードの兵士がふたり、アナキンに速度を落とせと手を振った。 彼はそれを無視した。 街の外に出ると、地震はいっそう激しくなった。強い風が吹きはじめているのに気づいて、アナキンは不安を感じた。落ちてくる月に乱され、大気自体が圧縮されているのだろう。計算の結果はわかっている。あの月が墜落してくるまでには、まだ二、三時間の猶予はあるはずだ。だが、ひょっとすると、この惑星はそれまでもたないかもしれない。さもなければ、この惑星は地震や、激しい風や、津波などの派生的な災害に滅ぼされ、実際に月が落ちてきたときには、人々は死に絶えているかもしれない。 彼はランドスピーダーの速度をいっそう上げ、エンジンを酷使した。反射神経よりも直感に頼って飛んでいると、まるでランドの小惑星帯を飛んでいるような錯覚に陥る。彼の隣では、老市長が落ち着き払って静かに座っていた。跳ね飛んでくる岩や渦巻く土埃でランドスピーダーが埋まりそうになっても、わずかに身じろぎするだけで、騒ぎもしない。アナキンは彼のことはほとんど考えなかった。だが、ちらっと横を見ながらフォースを送ると、この老人は落ち着きを装っているのではなく、実際に落ち着いているのがわかった。この呪われた運命を、絶望を感じないで受け入れているのだ。 アナキンは老人の落ち着きを使って、冷静さを保った。座標を見ると、月を引き寄せているものは、このあたりにあるはずだ。 でも、何を探せばいいのか? 巨大な機械か?重力井戸プロジェクターを搭載したインターディクター・クルーザーなど、どこにも見あたらない。惑星の表面にできた亀裂か?それも見あたらない。見えるのは地震による地割れだけだ。 彼はランドスピーダーの速度を落とし、目を閉じて、自分の周囲にフォースを送った。老人の落ち着き、すごい速さで通過していく月に引かれ、よじれる惑星の動揺、あらゆる生物の恐怖がアナキンの口のなかに苦い味を残す。 アナキンは深く、深く見つめた。月をつかめるほどの力を放つものが、フォースに見えないはずはない。 その月は、いまやとてつもなく巨大になり、再び空を昇っていた。風が吼え、地面が膨れ上がり、うねる。 アナキンは引く力を感じた。それは彼でもなく、ほかの何でもなく、空の月だけを引いている。彼はフォースを送りつづけながら目をあけた。すると彼の前に、そのトラクター・ビームがはっきりと“見えた”。 アナキンはランドスピーダーの速度を上げ、方向を変えてふたつのいまにも崩れ落ちてきそうな峰にはさまれた峡谷に飛びこんだ。巨大な岩が落ちてきて、ランドスピーダーのすぐ後ろで砕けた。もう少し遅かったら、つぶされるところだ。スピードが彼らの味方だった。細い谷崖の両側から次々に岩が落ちてくる。谷から出たとたん、今度はすさまじい向かい風に打たれた。まるで空気がぎゅっと絞られているような感じだった。空を見上げると、月が炎の尾を引いている。ついに大気圏に入ったのだ。 「ほとんど前に進んでおらんぞ」老人が落ち着いた声で言った。 アナキンはスピーダーを横に傾け、落石を避けながら細い谷を急上昇した。途中で特別ひどい風にあおられ、あやうく崖に激突しそうになったが、うまくべつの峡谷に飛びこみ、その端から飛びだした。風の勢いは多少は弱まっていた。彼は再び進みはじめた。 彼らは広い空き地に出た。岩と土だけの荒れ地、低い山脈のなかの盆地のひとつだ。アナキンはその荒れ地の真ん中に火口を見つけた。フォースを送らなくても、それがこのすべての原因であることはわかった。彼は素早くそこに近づき、二〇メートルばかり離れたところでランドスピーダーを止め、エンジンを切って飛び降りた。そして身をかがめて空き地を走った。 その火口は大きくはなかった。直径はわずか二四、五メートル。それに深さも一〇メートルぐらいしかない。その底で、紺色の棘に覆われた、暗赤色の巨大な心臓みたいなものが脈打っている。アナキンはそれを見つめ、パワー・ソースとのコネクターか、コントロールのようなものを探した。 「あれは何だ?」老人が火口の縁にいるアナキンの横に並んだ。 アナキンはフォースを使ってもっと深く見た。間違いなくこれがトラブルのもとであるばかりか、恐ろしいことに生きている生物だ!彼は思わずあえぎながら、ブラスターを引き抜いた。 「あれがドビードを引き寄せているのか?」老人が信じられないという声で尋ねた。 「後ろにさがって」アナキンは狙いをつけながらそう言った。老人はその場を動かなかったが、目の前の強力なパワーを持つ、未知の生物にすっかり心を奪われ、アナキンはそれに気づかなかった。彼はブラスターを構え、それを撃った。 エネルギー・ビームが火口の底に走り・・・消えてしまった。ただ、消えたのだ。強い風を受けて蝋燭が消えるように。アナキンは何度も撃ったが、ブラスター・ビームは何の影響も与えていないように見えた。 「どうした?」さっきより大きな声で、老人が再び尋ねた。 「あのランドスピーダーで、ぼくのパパのところに戻って」アナキンはそう指示し、ライトセーバーを腰からはずした。 「醜いほうかい?それとも毛深いほうか?」 アナキンは老人の言葉を無視して、火口の縁から踏みだそうとした。 そのとたんに地面が荒々しく動き、彼も老人も吹っ飛ばされた。ヤング・ジェダイはあわてて起きあがると、まるで溶岩のない噴火のように、火口から土や石が飛んでくる。 この“噴火”は出し抜けに終わった。ふたりが縁に戻ると、火口の底に深い穴があいていた。心臓のような形をした生物は、自分が攻撃されているのを察知し、重力を逆に使っておそらくはサーンピダルのコアをつかみ、はるか下に逃げこんでしまったのだ。 どうすればいい? するとそのとき、空から耳慣れたエンジンの音が聞こえてきた。見上げると<ミレニアム・ファルコン>が、山のてっぺんから急降下してくる。<ファルコン>はあっという間に彼らの横の小石の多い荒れ地に着床し、すぐさま昇降ランプが降ろされ、父が駆けおりてきた。たくさんの人々、サーンピダルの難民が、<ファルコン>から顔を出している。 「急いで戻らなきゃならん!チューイーは惑星からの脱出を組織してるが、船が足りないんだ!」 「あれはそこの下にいる」アナキンは火口を指さした。「生きてるんだよ!」 ハンは首を振った。「もう、どっちでもいいんだ」彼は唇をゆがめた。アナキンは父の顔を見て悟った。サーンピダルにとってはもう遅すぎるのだ。たとえ彼らがこの生物をどうにか殺し、トラクター・ビームを切ることができたとしても、すでに軌道を失ったドビードは墜落してくる。 「一秒ごとに誰かが死んでいくんだ」ハンの言葉にアナキンはランプを駆け上がった。だが老人は彼らに従おうとはせず、火口の縁に戻った。 「すくなくとも、あの悪魔がここから脱出し、ほかの惑星を破壊するのを止めねばならん」彼はにこやかにそう言い、外套の前を開けて、一メートルもあるチューブを取りだした。 「サーマル・デトネーターだ。あんたらは急いで立ち去るがいい」 「狂ったのか?」ハンは彼を説得しようとしたが、サーンピダルの市長は、落ち着いた足どりで火口に入り、穴に飛びこんだ。 <ファルコン>が空に舞い上がったとたん、デトネーターが爆発し、何トンもの土を噴き上げて、空き地の上に巨大なキノコ形の雲を作った。 「奇妙な老人だったな」ハンは茫然とつぶやいた。 アナキンは窓の外、火口があった場所を見た。エイリアン生物が引くパワーはもう感じない。「あの人がやっつけた」アナキンは父に報告した。 ハンは頷いた。あの老人は彼らに一秒の時間を稼いでくれたわけではない。サーンピダルを救ったわけでもないが、それでも、あれは真に価値ある、英雄的な行為だった。 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P.98-103 |
プリフェクト・ダガラにとっては、これは最も栄光に満ちた霊的な時、彼の目的の縮図であり、努力の報酬であり、最も歓迎すべき仕事だった。 彼はヤモスクの前にある台にひとりで立っていた。ヤモスクの目が彼を食い入るように見つめている。この場合にふさわしいユン=ヤムカの祈りを唱えながら、彼は片手を上げ、静かにヤモスクの目のあいだ、脈打つ青い静脈に触れた。ここがテレパシーの接点なのだ。 ヤモスクとダガラはひとつになり、ヤモスクの意識がダガラを圧倒した。プリフェクトは戦いの調停者の連結のパワーを感じ、ヤモスクの存在の目的を感じ、その鋭敏なエネルギーを通じて、自分の率いる軍隊、プレトライト・ヴォングと交わった。 ダガラはさらにヤモスクのうちに沈み、自分の感情を与えた。ヤモスクも自分の思いを伝えてくる。彼らの考えは同じだった。拡張する時がきた。手を伸ばし、広大な銀河の征服に着手する時が来たのだ。 だが、その前に、彼らは敵の一部をおびきだし、ヤモスクが完全にコントロールし、調整しているユージャン・ヴォングの戦場で、新共和国の戦艦を滅ぼさなくてはならない。 プリフェクトは歓喜に震え、疲れ果ててヤモスクのそばを離れた。肉体的には消耗しているが、気持ちはかつてないほど高揚している。彼はまっすぐ自分の部屋に戻り、ヨミン・カーのヴィリップを取りだした。だが、気が変わって、ノム・アノアのヴィリップと連絡を取った。 エグゼクターは、即座に応じた。 「今日、着手します」ダガラは報告した。 「栄光と勝利とともに行くがよい」ノム・アノアは適切な答えを口にした。「そして戦士として死ぬがよい」 ダガラは最敬礼した。「われわれはユージャン・ヴォングに不名誉をもたらすことはありません」彼もまた適切な言葉で応じた。「サーンピダルは今日死ぬでしょう」 「サーンピダルの民は?」 「多くが脱出をはかっております。彼らが逃げた先で、われらの戦士は次の戦いに挑みます。闘いの調整者は、敵を遮り追いかけるために、四戦闘部隊送りだしました。彼らはサーンピダルの難民のあとを追い、彼らが逃げこむ惑星で戦いを開始するでしょう」 「“ド=ロイク・ヴォング・プラッテ”」ノム・アノアは言った。 ダガラはこの大胆な宣言に息を呑んだ。ド=ロイク・ヴォング・プラッテは、ユージャン・ヴォングの戦いの雄叫びで、残虐の限りをつくし、思う存分戦士たちの本領を発揮させろ、という意味だ。この命令を受けた戦士たちは、純粋に殺しを楽しむ狩人になる。 「“ド=ロイク・ヴォング・プラッテ”」ダガラは同意した。「われわれの敵に禍あれ」 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P.104-105 |
サーンピダル Sernpidal |
Chewbacca #4 P.5 |
ハンが<ファルコン>でサーンピダルに戻ったときには、ドッキング・エリアはなくなっていた。激しい隆起で、塀が倒れてしまったのだ。まだ悲鳴をあげながら走りまわる者、ストリートにひれふしトシ=カルに祈っている者もいる。 だが、街の人々はほとんどが詰めこまれていた。一人乗りからフレイターまで、何十隻もの船が定員を超過してできるだけ大勢を乗せ、空中に舞い上がり、ここを立ち去ろうとしている。 ハンはすぐにチューイーを見つけた。ウーキーは片手でふたりの子供を抱え、長い腕を振っていた。「手伝ってこい」ハンの指示で、アナキンはコクピットを走りでて、<ファルコン>にぎっしり詰めこまれた人々をかき分け、下のほうの昇降ランプに向かった。ハンは強風を補整しながら、<ファルコン>をゆっくり降ろしていった。「急げ、急げ」彼はつぶやいた。至るところに破片が飛びかい、チューイーと子供たちがそれにぶつかって吹っ飛ばされないのが、幸運なくらいだ。 彼は<ファルコン>を地面までわずか数メートルのところに降ろし、チューイーのいる場所に移動した。 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P.106 |
サーンピダル Sernpidal |
Chewbacca #4 P.5 |
「キッドたちはなかに入った」アナキンがインターコムで報告してきた。「これからチューイーも入れるところだよ」 どこかで爆発が起こり、街を揺るがせた。<ファルコン>から数ブロック離れた横のほうだ。塀の残がいの上に飛びあがろうとしていた小型シャトルが、急に失速して視界から消えた。 ハンはコンソールを拳で叩いた。「あいつは乗ったか、キッド?」彼はアナキンに尋ねた。 「チューイーはシャトルのところに向かってる。ぼくも行ってくるよ。あっちに迎えにきて」アナキンが言い終わるのとほとんど同時に、チューイーがボウキャスターを肩からはずしながら、<ファルコン>の下から走りでるのが見えた。 アナキンはそのあとを追い、シャトルとの間にある塀に穴をあけようと速度を落としたチューイーに近づいた。 「あれを片づけなくちゃ」アナキンはあいた穴から塀を通過しながら叫んだ。たった一基のイオン・ドライブでは吹き飛ばして離床するのが危険なほど、シャトルの船尾は瓦礫に埋まっている。 チューイーはすぐさま仕事にかかった。ボウキャスターを連射し、大きなかたまりを砕くと、強い腕でそれをつかんでは投げはじめた。 「急いで!」シャトルの横のハッチが開き、そこに立っている女性が叫んだ。「この船には大勢乗ってるの。みんな死んでしまうわ」 アナキンは瓦礫の山とウーキーの仕事の進み具合を見た。<ファルコン>がすぐ後ろの塀のところで待機するのが聞こえた。父のレーザー・キャノンで蒸発させてもらえば簡単なのに、アナキンはちらっとそう思った。 だが、そんなことは不可能だ。彼はべつのパワー・ソースを使うことにした。内なるソースを。そして瓦礫にフォースを送り、大きなかたまりを次々に持ち上げて、放り投げた。またしても地震が街を揺さぶり、落ちてくる月が東の地平線に現れた。最後に通過したときよりもはるかに大きく、今度はその周りを炎が包んでいる。即座に風が耳をつんざくほどの唸りをあげはじめた。 だが、アナキンは落ち着きを保ち、瓦礫を順序よく投げ飛ばした。 ウーキーがこれに同意してひと声吼え、自分もボウキャスターで吹っ飛ばしつづける。まもなく、チューイーは後ろにさがり、シャトルのなかの女性をせかした。 「離床するんだ!」アナキンが通訳して、叫んだ。「急いで離床するんだ!」彼とチューイーは後ろにさがり、シャトルが飛び立つのを見送った。 そのシャトルは一〇メートルばかり上がったところで、強風にあおられた。その風で、チューイーとアナキンは地面に倒れた。 幸い、シャトルや彼らより大きな<ミレニアム・ファルコン>はその場に留まり、ハンは下の昇降ランプを降ろして、息子とパートナーに向かって片手を伸ばした。「急げ!落ちてくるぞ!」 チューイーは風と闘いながら、少しだけ<ファルコン>に近づいた。アナキンはその横に並び、ほとんど地面から浮くようにして、フォースの強さでチューイーを引っ張り、前に進みはじめた。 と、そのとき、哀れっぽい泣き声が聞こえ、ふたりとも周囲を見まわした。そして半分埋まった隔壁の下から、大きな目が彼らを見上げているのに気づいた。 アナキンは突然チューイーを放し、方向を変えた。ウーキーはちらっとハンを見てそのあとを追った。 「船に戻るんだ」アナキンは大声で怒鳴った。が、風がそのほとんどを運び去ってしまう。 チューイーは唸り、首を振った。 「だったら、フォースを使って、ふたりとも運ぶよ」哀れっぽい泣き声が再び聞こえた。「それとあの下にいる子も!」 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P.106-109 |
サーンピダル Sernpidal |
Chewbacca #4 P.6 |
彼らは必死に隔壁を取りのぞきにかかった。筋肉と肉体と精神で瓦礫をはねのけ、それからチューイーが手を突っこんで少年をつかみだした。まだほんのよちよち歩きの幼児だ。三人は一緒に<ファルコン>に向き直り、激しい風と闘いながら、盛り上がり、うねり、揺れる地面を踏みしめて歩きだした。轟音をあげる風のなかで、<ファルコン>は必死に同じ位置を保っている。 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P.109 |
サーンピダル Sernpidal |
Chewbacca #4 P.6 |
彼らは近くまでたどりついた。ハンが腕を伸ばせば、アナキンの差しだした手を握れそうなほど近くに。が、そのとき、転がってきた破片が彼らを襲い、チューイーはどうにかもちこたえて、幼児をかばったものの、瓦礫のひとつがアナキンの頭に当たった。アナキンは集中力を失い、地面を転がった。 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P.109 |
サーンピダル Sernpidal |
Chewbacca #4 P.6 |
ハンは恐怖に目を見開いた。チューイーは幼児をハンの腕に投げ、ハンが凍りついているあいだに、身をひるがえし、追い風に乗って飛ぶように倒れたアナキンを追った。 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P.109 |
サーンピダル Sernpidal |
Chewbacca #4 P.6 |
ハンは幼児をそばにいた者に渡し、コクピットに駆け戻った。あのふたりがこの風に逆らって<ファルコン>に戻る時間はない。彼は<ファルコン>を素早く、だが着実に移動させた。チューイーはアナキンに追いついて、彼を抱き上げた。 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P.110 |
サーンピダル Sernpidal |
Chewbacca #4 P.6 |
ハンはそこに<ファルコン>を固定し、手助けしようと歩み寄った人々を押しのけ、昇降ランプに立った。だが、<ファルコン>はもう位置を保つことができず、浮き上がり、横に滑った。あるいは地面がさがり、滑っているのかもしれない。エンジンがかん高い抗議の唸りを発した。 「チューイー!」ハンはランプにしがみついて叫んだ。ほかの何人かがハンに駆け寄り、彼の足をつかんでくれた。ハンは必死にウーキーに手を伸ばしたが、<ファルコン>は高すぎた。 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P.110 |
サーンピダル Sernpidal |
Chewbacca #4 P.9 |
チューバッカはあきらめと満足を浮かべてハンを見上げ、それから待っているハンの腕に、アナキンを投げた。 地面がうねり、傾いて、突然チューイーを遠くに連れ去った。 アナキンをすぐ横の床に降ろすと、ハンはコクピットに走った。意識を取り戻したアナキンも、どうにか立ち上がって父のあとを追った。 ハンはコントロールを操作し、<ファルコン>を回して向きを変えた。コムが空電とほかの船の恐怖の叫びをがなりたてる。飛び立った船もあれば、どこへ向かえばいいのかわからない船もあった。 ハンはそのすべてを無視し、ウーキーの友を探した。 アナキンがチューイーの椅子に座った。 「あいつはどこだ?」 アナキンは深く息を吸いこんだ。彼はチューイーをよく知っている。フォースで見つけることができるはずだ。 見つかった。 「左だ!」彼は叫んだ。ハンは<ファルコン>を左に向けた。「あの角の向こうだ!」 「ここを頼む」ハンはアナキンに言い、大急ぎで昇降ランプに戻った。「おれをあいつのところに連れてってくれ!」 アナキンは夢中でコントロールを操作した。<ファルコン>はいまにもばらばらになりそうなほど激しく揺れている。またしても倒れてくるビルをよけながら、彼は船体を立て、路地に突っこんだ。 「たいへんだ」<ファルコン>に背中を向けて立っているチューイーの向こうに、炎に包まれたドビードが落ちてくる。 「もっと近づけ!」父が叫ぶ。 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P.110-111 |
サーンピダル Sernpidal |
Chewbacca #4 P.4 |
チューイーが振り向き、ハンに向かって一歩踏みだした。だが、その瞬間、熱い風が吹き抜け、彼を倒した。その上にビルが崩れかかる。瓦礫は<ファルコン>の上にも落ちた。シールドがうめくような音を立て、<ファルコン>の船首がぐいと持ち上がった。 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P.111 |
サーンピダル Sernpidal |
Chewbacca #4 P.9 |
アナキンは必死に船体を水平に戻そうとした。そしてウーキーを探すために向きを変えようとした。だが、彼の目に映ったのは、ウーキーではなく、真っ赤な火の玉となって落ちてくるドビードだった。サーンピダルの熱狂的な信者が、まだ荒廃したストリートで祈りを捧げている女神トシ=カルが、ついに降臨したのだ。 もうぐずぐずしている時間はない。アナキンは即座にそれを悟った。いまここでチューイーを助けるために向きを変えたら、このまままっすぐに空を駆け昇らなければ、墜落する月のもたらす衝撃が<ファルコン>を引き裂いてしまう。 チューイーのところに戻れという父の懇願が聞こえた。 だが、アナキンは<ミレニアム・ファルコン>を空に向け、スロットルを全開にした。 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P.111-112 |
ハンは見た。 傷だらけで血まみれのチューイーが、どうにか立ち上がり、瓦礫の山に仁王立ちになって、落ちてくる月に向かい、両腕を上げて挑むように吼えるのを。 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P.112 |
サーンピダル Sernpidal |
Chewbacca #4 P.9 |
この光景は一瞬にして遠ざかったが、ハンの目はその場に釘付けにされたままだった。彼の友の最期の瞬間は、彼の意識に焼きついた。そしてそれから、ドビードが街にめり込み、最後の大激変がはじまるのが見えた。 昇降ランプが突然上がり、収納の場所におさまった。彼の息子がしたことなのはわかっていた。そして次の瞬間、<ファルコン>は月の墜落がもたらした衝撃波を食らって吹っ飛んだ。 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P112-113 |
サーンピダル Sernpidal |
Chewbacca #4 P.9 |
自分やほかの人々の危険さえ、いまのハンの心にはなかった。息子のことさえ忘れていた。彼の思いにあるチューイーは、目に焼きついている最期は、とうていかなわぬ大いなる敵に向かって拳を振り立てるウーキーの、悲劇的な姿だけだった。 ふさわしい雄姿。だが、これは引き裂かれたハンの心を繕う役には立ってくれなかった。 |
サーンピダル Sernpidal |
新たなる脅威 下 P113 |
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